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一般社団法人日本生殖医学会

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ホーム > 一般のみなさまへ:生殖医療Q&A > Q25.男性の加齢は不妊症・流産にどんな影響を与えるのですか?

一般のみなさまへ

質問年齢が不妊・不育症に与える影響
Q25.男性の加齢は不妊症・流産にどんな影響を与えるのですか?

回答

 成人男性の精巣では、生涯を通じて精子がつくられますが、加齢とともに少しずつその機能が低下します。精子の数や運動性が少しずつ低下したり、精子のDNAの損傷が増えたりすることがあります。これにより、受精しても胚の発育がうまくいかず、流産につながる可能性があります。最近の報告を参考に、現在考えられていることを簡単に紹介します。

1)精液所見・精子のDNAや染色体に対する影響

 加齢によって生じるさまざまな要因は、精液所見に影響を及ぼすと考えられます。具体的には、精液量は加齢とともに減少することが知られています。大規模な研究では、精液量の減少が平均35.5歳から顕著になると報告されています。そのため精子数も年齢とともに減少すると考えられています。また加齢に伴い、精子の運動率が低下するという報告が複数あります。ある研究では5年ごとに1.2%の低下が報告されており、他の研究では、50歳以上の男性では前進運動率が40~50歳の男性と比べて半分にまで低下していると報告されています。
 また、加齢によってさまざまなメカニズムを通じて精子のDNAの断片化率(DNA fragmentation index: DFI)が上昇することが知られています。ある研究では50歳以上の男性でDFIが30歳未満に比べて4.58倍高いと報告されており、DFIが30%以上の方の割合は50歳以上で30%、30歳未満では14.7%とされています。また、女性と同様に男性の加齢も染色体異常のリスク上昇と関連があると考えられています。

2)生殖補助医療(体外受精・顕微授精)の結果に与える影響

 上記のとおり、男性の加齢に伴い精子の質が低下し、生殖補助医療のアウトカムにも影響が出ることが知られています。複数の研究結果をまとめた研究(メタ解析)では、男性の年齢が40歳未満の場合はそれ以上と比較し、臨床妊娠率および生児出産率は有意に高かったという結果が認められました。また、男性年齢が50歳未満の場合、それ以上と比較して胚盤胞形成率が有意に高かったという結果が認められました。これらの結果は、上記の精子のDNA断片化や精子の染色体異常が関連していると考えられます。
 しかし、男性側の生活指導や治療介入、および近年の生殖補助医療および精子選別の技術の進歩により、高齢男性であっても運動精子を認めれば妊娠・出産を期待できます。

3)流産や生児に与える影響

 男性の加齢が自然流産に与える影響について調べたメタ解析によると、年齢層別(30-34歳、35-39歳、40-44歳、45歳以上)の流産リスクは徐々に増加するという結果でした。また、初期流産について調査した研究では、男性年齢が45歳以上の群における初期流産率は他の群では有意な差がみられなかったのに対し、有意に高かったという結果でした。生まれてくる児の健康については様々な形で影響するとの報告もありますが、一般的には頻度が低く、その意義について一定の見解はありません。

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