ページの先頭です

一般社団法人日本生殖医学会

MENU
English
ホーム > 一般のみなさまへ:生殖医療Q&A(旧 不妊症Q&A) > Q25.男性の加齢は不妊症・流産にどんな影響を与えるのですか?

一般のみなさまへ

質問年齢が不妊・不育症に与える影響
Q25.男性の加齢は不妊症・流産にどんな影響を与えるのですか?

回答

 成人男性の精巣では、生涯を通じて精子がつくられますが、加齢とともに少しずつその機能が低下します。精巣の大きさも少しずつ小さくなり、男性ホルモンをつくる力も緩やかに低下しますが、両方の精巣が無くならない限り「去勢」状態になることはありません。女性でみられる閉経のような変化が無いことや、個々の健康状態にも違いがあることから、男性では年齢で不妊症に区切りをつけることはなかなかうまくできません。体外受精や顕微授精などの生殖補助医療の成績と男性の加齢との関係について様々な報告がされています。最近の報告を参考に、現在考えられていることを簡単に紹介します。

1)精子数は減るのでしょうか?

 1日あたりにつくられる精子数は加齢とともに減少するとされていますが、精液量も減ってしまうため精子濃度はあまり変わらないとされています。精子運動率や精子正常形態率は加齢とともに低下すると報告されています。過去の報告のまとめでは、30歳代と比較すると50歳代では精液量は3~22%、精子運動率は3~37%、精子正常形態率は4~18%低下するとされています。一般に高齢の男性の配偶者は高齢であることから、精液所見の低下がどの程度不妊症に関係するかを知るのは難しいと考えられます。また、運動精子を認めれば体外受精や顕微授精などで妊娠出産を期待できますので、精子減少と不妊症を結びつけるのはさらに複雑です。

2)体外受精や顕微授精の成功率は下がるのでしょうか?

 運動精子が存在しても、その精子の機能が低下していれば、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療による受精率や妊娠率が低下する可能性があります。精子DNAの断片化の比率が加齢とともに上昇するとの報告もあります。さらに、女性の年齢のみでなく、男性でも35歳を過ぎると生殖補助医療による出産率が低下するとの報告もあります。しかし、男性の加齢が生殖補助医療の成績に及ぼす影響については様々な意見があり、現時点では結論は出ていないと考えられます。

3)流産や生まれてくる児に影響を与えてしまうのでしょうか?

 比較的多数の症例対照研究によると、女性の年齢や他の要因の影響を除いても、男性の加齢によって自然流産の確率が上昇すると報告されています。また、45歳より高齢の男性では25歳未満と比較して自然流産の確率が約2倍になるとするものや、自然流産に与える影響は男性の40歳以上は女性の30歳以上に相当するとの報告もあります。生まれてくる児の健康に様々な形で影響するとの報告もありますが、一般的には頻度が低く、その意義について一定の見解はありません。

参考文献  Mazur DJ & Lipshultz LI. Infertility in the Aging Male. Cur Urol Reports 19:54,2018.

▽印刷してお読みになりたい方はPDFをご利用ください

印刷用PDFのダウンロード(PDF 240KB)

©一般社団法人日本生殖医学会
掲載されている情報、写真、イラストなど文字・画像等のコンテンツの著作権は日本生殖医学会に帰属します。本内容の転用・複製・転載・頒布・切除・販売することは一切禁じます。

このページの先頭へ