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一般社団法人日本生殖医学会

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一般のみなさまへ

質問原因
Q4.不妊症の原因にはどういうものがありますか?
1)女性の不妊症の原因 2)男性の不妊症の原因

回答

 妊娠が成立するためには、卵子と精子が出会い、受精して着床するまで、多くの条件がそろう必要が有ります。そのため、不妊症の原因は、多くの因子が重複していたり、逆に検査をしても、どこにも明らかな不妊の原因が見つからない原因不明のものもあります。
 ここでは、女性、男性それぞれで認められる不妊の原因をご紹介します。

1)女性の不妊症の原因

 女性の不妊症の原因には、排卵因子(排卵障害)、卵管因子(閉塞、狭窄、癒着)、子宮因子(一部の子宮筋腫や子宮内膜ポリープなど)、頸管因子(子宮頸管炎、子宮頸管からの粘液分泌異常など)、免疫因子(抗精子抗体など)などがあります。このうち排卵因子、卵管因子に男性不因子を加えた3つは頻度が高く、不妊症の3大原因と言われています。女性側の不妊原因を図1に示しました。これらを順に説明していきます。

(1)排卵因子
 月経周期が25日~38日型で、基礎体温が二相性の場合は心配ありませんが、これにあてはまらない方(月経不順)は、排卵障害の可能性が有るので、産婦人科医にご相談下さい。
 排卵障害の原因は様々ですが、プロラクチンという乳汁を分泌させるホルモンの分泌亢進による高プロラクチン血症によるものや、男性ホルモンの分泌亢進を特徴とする多嚢胞性卵巣症候群によるものがあります。その他、環境の変化等に伴う大きな精神的ストレス、あるいは短期間にダイエットにより大幅な体重減少した場合にも月経不順をきたし、不妊症になります。
 日本人の女性は45歳から56歳の間に閉経を迎えますが、まれに20歳台や30歳台にもかかわらず卵巣機能が極端に低下し無排卵に陥る早発卵巣不全も不妊症の原因になります。

(2)卵管因子
 性器クラミジア感染症は、卵管の閉塞や、卵管周囲の癒着によって卵管に卵子が取り込まれにくくなるために不妊症になります。とくに女性ではクラミジアにかかっても無症状のことが多く、感染に気づかないことがあります。
 虫垂炎など骨盤内の手術を受けた経験がある方にも、卵管周囲の癒着をきたしていることがあります。また月経痛が徐々に悪化し、鎮痛剤の使用量が増えている方は子宮内膜症の疑いがありますが、この子宮内膜症の方の中に、卵管周囲の癒着がみつかることもあります。

(3)子宮因子
 月経量が多く、血液検査で貧血を指摘された方は子宮筋腫、中でも子宮の内側へ隆起する粘膜下筋腫の疑いがあります。粘膜下筋腫は受精卵の子宮内膜への着床障害による不妊症になります。なお、一部の子宮筋腫は着床を妨げるだけでなく、精子が卵子へ到達するのを妨げて妊娠しにくくなることもあります。同様に一部の子宮内膜ポリープも着床障害の原因になります。子宮内腔に癒着をきたし、月経量が減少する状態をアッシャーマン症候群と呼び、着床に影響することがあります。
 一方子宮形態異常とは先天的に子宮が変形している状態ですが、不妊症の原因というより、むしろ反復する流産の原因となるといわれています。

(4)頸管因子
 排卵期に透明で粘調な帯下(おりもの)の増加がありますが、子宮頸部の手術、子宮頸部の炎症などにより、頸管粘液量が少なくなった場合、精子が子宮内へ貫通しにくくなり、不妊症になります。

(5)免疫因子
 何らかの免疫異常で抗精子抗体(精子を障害する抗体)、特に精子不動化抗体(精子の運動を止めてしまう抗体)を産生する女性では、抗体が頸管粘液内にも分泌され、例え運動性の良い精子でも通過を妨げてしまいます。また卵管内にも精子不動化抗体は分泌され、人工授精で精子を子宮腔の奥まで注入しても、卵管内でその通過が妨げられてしまいます。受精の場面でも、精子不動化抗体は精子が卵子と結合することを妨害し、不妊症になることがあります。

(6)原因不明不妊
 不妊症の検査をしても、どこにも明らかな不妊の原因が見つからない場合を、原因不明不妊と呼んでいます。この場合、本当に原因がないわけではなく、検査では見つからない原因が潜んでいることもあります。
 原因不明不妊は従来、不妊症の10~15%を占めるといわれてきましたが、最近は特定の不妊原因を持たない高年齢の不妊女性が増加してきたことに伴い、その頻度は大幅に増えていることが推定されています。
 その原因のひとつは、何らかの原因で精子と卵子が体内で受精していない場合で、人工授精や体外受精治療の適応となります。
 もう一つの原因は、精子あるいは卵子そのものの機能(正常な児として成長する力)が低下している、あるいはなくなっている場合です。後述する加齢などがこの原因となると考えられており、その一つの証拠として原因不明不妊は夫婦の年齢が上昇すると一般に割合が高くなることが報告されています。この力は年齢とともに低下し、女性の場合おおむね37歳から44歳の間のどこかの時点で消失します。いったん精子や卵子の力が消失してしまうと、現在の医学では有効な治療はほとんどありません。そのため、そうなる前に治療を開始することが唯一の対処法となります。

図1.女性側の不妊原因
図1 女性側の不妊原因

2)男性の不妊症の原因

 男性の不妊症の原因は、(1)射精される精液の中の精子の数が少ない、もしくは運動率が低下している、あるいはその両方の場合、(2)勃起ができず挿入できない、勃起はするが射精がうまくいかない、あるいはその両方、(3)精子は作られているものの精子の通り道(精路)のどこかが閉塞しているため精液中に精子がない、という3つに大きくわけられます。(1)については精子をつくる過程に原因があるので「造精機能障害」、(2)は性機能障害、(3)は精路通過障害と呼ばれます。

(1)造精機能障害
 精子は精巣(睾丸)の中で作られ、精巣上体を通り抜ける間に運動能力をえて、受精を行うことの出来る完全な精子となります。精巣での精子形成や、精巣上体での成熟過程に異常があると、精子の数が少なくなったり、精子の動きが悪くなったり、奇形率が多くなったりして、受精する力が低下します。
 原因は多々ありますが多くのケースではまだ原因不明であり、漢方薬やビタミン剤、最近では抗酸化剤なども加えて治療を行います。ついで多いのが精巣の上にある血管(静脈)が怒張する精索静脈瘤で、外科的手術によって精液所見が回復する可能性があります。ほか視床下部-下垂体で造精機能を司るホルモンの分泌低下による低ゴナドトロピン性性腺機能低下症、停留精巣の手術後やおたふく風邪による精巣炎、クラインフェルター症候群(47,XXY)に代表される染色体異常、近年調べられるようになったY染色体の微小欠失によって判明した遺伝子異常、抗がん剤などの治療後なども造精機能の低下、消失をきたす場合があります。

(2)性機能障害
 性機能障害には、有効な勃起が起こらず性行為がうまくいかない勃起障害(ED)と射精ができない射精障害があります。EDの原因には動脈硬化や糖尿病を一因とする神経性、血管性などもありますが最も多いのは心因性のEDといわれ、不妊の治療としてタイミング指導を行う場合性行為そのものをプレッシャーに感じてしまいEDをきたすケースもあります。同じ原因で勃起挿入はできるものの射精のプレッシャーから腟内射精ができない腟内射精障害も起こります。
 射精障害には射精はできているものの精液が膀胱内に逆流してしまう逆行性射精や精液が出なくなる無精液症、早漏・遅漏のように射精に関する全て機能が備わっていても最終的に本人の満足のいく射精が出来ない場合もあります。原因は神経障害や糖尿病、心因性、薬剤性などさまざまです。

(3)精路通過障害
 精子は精巣内で作られた後、精巣上体、精管、射精菅を経て尿道に精巣内では精子が作られているのに精液中に精子が出てこない閉塞性無精子症があります。代表的な疾患として先天性の両側精管欠損や精巣上体炎後の炎症性閉塞、鼠径ヘルニア手術等があります。本疾患については閉塞した精路を再建したり、精巣内の精子を回収して顕微授精することにより、挙児の可能性が出てきます。

図1.男性側の不妊原因
図1.男性側の不妊原因
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