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一般社団法人日本生殖医学会

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一般のみなさまへ

質問治療
Q12.体外受精とはどんな治療ですか?

回答

 体外受精は、採卵手術により排卵直前に体内から取り出した卵子を体外で精子と受精させる治療です。受精が正常に起こり細胞分裂を順調に繰り返して発育した良好胚を体内に移植すると妊娠率がより高くなることから、一般的には2-5日間の体外培養後胚を選んで腟から子宮内に胚移植します。
 採卵手術に先立ってしばしば調節卵巣刺激という方法で数個~10個前後の成熟卵を得るべく排卵誘発剤を1週間前後使用します。卵巣の反応は個人差が大きく、卵巣過剰刺激症候群という副作用が生じることもあります。この副作用は、妊娠成立時により悪化と長期化を生じやすいので、新鮮な胚移植を回避し全胚凍結とすることがあります。
 採卵手術は、経腟エコーで観察しながら腟から卵胞を穿刺し、卵胞液とともに卵子を吸引して行います。予測される採卵数や採卵の困難さをもとに麻酔を行うか無麻酔で行うかを決定します。採卵手術後には、着床に適した子宮内膜を作る目的で黄体サポート(黄体賦活・黄体補充)というホルモン治療を行います。良好な子宮内膜が期待できなければ、全胚凍結を選択します。日本産科婦人科学会は2008年4月に妊娠・分娩における母児リスクが高くなる多胎妊娠を防止する目的で移植胚数1個を原則とする見解を示しています。
 体外受精(を含む生殖補助医療)による出生児は全世界で800万人を超えたともいわれ、世界初の成功例で生まれた女性を含めて初期の体外受精による出生児が多数成人となり、体外受精を必要とせず次世代の児を得ていることが報告されています。これまでの報告では、体外受精そのものによって生まれた子どもの異常が明らかに多くなるという証明はありません。それでも。体外受精による出生児の長期予後については、その後の技術革新の影響も含めてまだまだ不明な点が多く、わが国でも大規模な出生後調査が進行中です。
 体外受精(あるいは次項の「顕微授精」)では、精子と卵子を顕微鏡観察により体外で確実に受精させるチャンスを与えることができます。受精や受精後の発育を経時的に観察することなどにより、不妊要因が新たに明らかになる場合もあります。また、技術革新により、妊娠・出産がより高率に可能な良好胚を選んで移植または凍結できるようになってきています。充分な凍結胚が得られれば、次のお子さんを目指して、採卵時の年齢でのより高い妊娠率かつより低い流産率を期待できます。これに対して他のすべての不妊治療では、妊娠しない場合にそれが体内で受精が起こっていないからなのか、それとも精子や卵子の力が落ちているからからなのかがわかりません。もし後者も原因の一つだった場合、体外受精以外の不妊治療を漫然と続けると、妊娠時期を遅らせ、出産するチャンスをさらに減らしてしまう危険性があります。概ね30歳以上の女性で、希望する数のお子さんを、希望する時期に得ることが、年齢・仕事・併存する病気等のために困難になった場合には、精子や卵子の力がなくなって妊娠することができなくなることを避けるため、一般不妊治療を早めに切り上げるか、最初から体外受精を検討することも、医療機関でご相談ください。

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