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1)女性側
外来で可能な一般的な検査から、疾患が疑われる場合等で必要な方に追加する検査があります。はじめは外来で簡便にできる検査から行います。
(1)一般的な検査
①内診・経腟超音波検査
産婦人科診察室の診察台(内診台)の上でおこないます。内診では、子宮や卵巣の大きさや痛みがないかを触って診察します。経腟超音波検査では、超音波プローブを腟から挿入して、子宮筋腫、卵巣のう腫、子宮内膜症、子宮内膜ポリープなどの異常がないかを確認します。また、月経周期に合わせることで排卵の有無を検査することができます。
②子宮卵管造影検査
月経終了後から排卵までの時期に、X線透視室で行います。X線により透視しながら子宮内へ造影剤を注入し、子宮の形の異常や子宮内の癒着、卵管の閉塞、卵管の腫大などがないか観察する検査です。この検査の後は自然に妊娠しやすくなる可能性もあります。
③血液検査
外来の採血室で血液を採取します。糖尿病など全身疾患に関係する一般的な検査と月経周期にあわせて行うホルモン検査があります。検査するホルモンは、卵胞刺激ホルモンや黄体化ホルモン、卵巣から分泌されるエストロゲンやプロゲステロン、男性ホルモンなどがあります。母乳の分泌に関連するプロラクチンや甲状腺ホルモンの検査も排卵障害など関わるため測定します。ホルモンの値は月経周期により変化するため、ホルモン検査は月経中や排卵後の黄体期に複数回行います。また、卵巣内に残っている卵子の数や排卵誘発薬への反応性の目安として抗ミュラー管ホルモン(AMH)を測定します。
(2)必要な方に追加する検査
①子宮鏡検査
子宮鏡検査はカメラを使用して、子宮の内側を直接観察する検査です。細いカメラを使用する場合、外来の診察台(内診台)で麻酔をせずに行うこともでき、妊娠や流産に影響する子宮内膜ポリープや子宮筋腫、子宮内腔の癒着があるか確認します。外来での子宮鏡検査で子宮内膜ポリープや癒着を取り除くことができる場合もあります。
②MRI検査
MRI検査は、磁気と電波を用いて体の断面像を描出する検査であり、放射線検査室で実施されます。子宮や卵巣の形態を詳細に観察できるため、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症、卵巣腫瘍などが疑われる場合に行われます。
③腹腔鏡検査
腹腔鏡検査は全身麻酔をかけ手術室で行う検査で、カメラをお腹の中へ入れて子宮や卵巣、卵管など状態を直接観察します。この検査により、子宮内膜症や卵管周囲の癒着など、不妊症の原因となる病変が見つかることがあり、治療方法を決める際の大切な情報となります。さらに、子宮内膜症や癒着を取り除くことで同時に治療を行うこともでき、術後に妊娠しやすくなる可能性があります。
2)男性側
男性不妊症かどうかを調べる最も基本的な検査は、精液検査です。不妊症の約50%は男性側に原因があるとされており、男性不妊症の原因検索は、女性側の検査と並行して進めていくことが望まれます。精液検査は、男性にとって心理的なハードルが高い検査ですが、男性不妊症を評価する上で極めて重要な検査です。現在のところ、妊孕性(にんようせい)を評価する方法としては精液検査しかなく、今後は精液検査以外によるスクリーニング法の開発が期待されています。精液検査で異常がみられた場合には、さらに詳細な検査が必要となります。
(1)精液検査
精液検査は、不妊治療を専門とするクリニックや病院で受けることができます。一般の泌尿器科クリニックや病院では、精液検査を実施していない場合もあるため、事前の確認が必要です。検査を受ける際は、2~7日 の禁欲期間を保つようにしましょう。精液はマスターベーションによって採取します。採精方法には、自宅で採取して持参する方法と、医療機関内で採精する方法があります。どちらを選べるかは施設によって異なるため、詳細は医療機関に問い合わせてください。一般的には、院内で採精した方がより正確な結果が得られます。精液検査では、主に精液量、精子濃度、精子運動率などを測定します。正常値の下限はWHOマニュアル2021に基づいており、基準を下回る項目がある場合には、さらに詳しい男性不妊症の検査が必要となります(表1参照)。なお、精液の状態は体調などにより変動するため、2回以上の検査を行い、総合的に判断することが推奨されています。
| 精液量 | 1.4mL以上 |
| 精子濃度 | 1,600万/mL以上 |
| 精子(総)運動量 | 42%以上 |
| 正常形態率 | 4%以上 |
| 白血球数 | 100万/mL未満 |
(2)泌尿器科的検査
男性不妊症かどうかを精査する方法は、問診、身体診察、陰嚢超音波検査、ホルモン検査、染色体検査などがあります。
①問診
既往歴(停留精巣、精巣捻転、性感染症、精巣外傷、手術歴など)や生活習慣(喫煙、飲酒、ストレス)、薬剤の使用歴(特に男性型脱毛症の薬)などを確認します。また、性行為の頻度やタイミング、勃起・射精機能も重要な情報です。
②身体診察
精巣の大きさ・硬さ・左右差を触診し評価を行います。次に精索を触診し、静脈が拡張している場合は精索静脈瘤の疑いがあり、これが精子形成に影響している可能性があります。精索静脈瘤は解剖学的に左側に多いのが特徴です。
③陰嚢超音波検査
非侵襲的な検査で、精巣の大きさや内部構造(腫瘍、精巣萎縮など)を視覚的に確認できます。特に、精索静脈瘤の評価(血流や逆流の有無)に有効で、身体診察だけでは不明な病変も検出可能です。
④ホルモン検査
LH(黄体化ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)、テストステロン、プロラクチン、エストラジオール(E2)等 を測定します。これにより、視床下部・下垂体・精巣のいずれのレベルに障害があるかどうかを判別できます。
⑤染色体検査
常染色体・性染色体に異常があると、精子の産生が極端に低下することがあります(例:クラインフェルター症候群 (47,XXY)、Y染色体微小欠失など)。特に、精液所見で無精子症や高度乏精子症が見られた場合に実施します。
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