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一般社団法人日本生殖医学会

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ホーム > 一般のみなさまへ:生殖医療Q&A > Q5.どんな人が不妊症になりやすいのですか?

一般のみなさまへ

質問リスク因子
Q5.どんな人が不妊症になりやすいのですか?
1)女性側 2)男性側

回答

1)女性側

 女性における不妊症の原因はさまざまですが、以下の項目に該当する方は特に注意が必要です。ご自身に不妊の要素があるかどうか不安な場合は、年齢に関わらず早めに近隣の産婦人科や不妊専門のクリニックでご相談ください。

(1)年齢が高い人
 加齢とともに卵子数が減少し、卵子自体の質も低下します。特に35歳を過ぎると妊娠率が低下する傾向にあり、40歳以上では顕著になります。また、加齢に伴い卵子における染色体異常の頻度が増えるため、妊娠しても流産する危険性が高まります。

(2)月経が不順な人
 月経が不順な方は、排卵がうまく起きていない可能性があります。排卵障害の原因として頻度の高い「多嚢胞性卵巣症候群」という病気は、月経不順や多毛を特徴とすることが知られています。

(3)月経に関連した症状が強い人
 「月経の量が多い」、「月経痛が強い」という症状のある方は、子宮や卵巣に病気を抱えているかもしれません。子宮や卵巣に異常があると、精子と卵子がうまく出会えなかったり、受精卵がうまく子宮に着床できなかったりするため不妊症の原因となります。たとえば、以下のような病気は不妊症の原因として知られています。

  • 子宮筋腫:子宮にできる良性の腫瘍で、大きさや場所によっては着床の妨げとなります。
  • 子宮内膜症:お腹の中で慢性的な炎症が起こり、卵管が周囲の臓器と癒着し閉塞する可能性があります。また、卵巣に病変ができた場合は、卵巣の機能が低下することが知られています。

(4)やせや肥満の人
 体重の増減も排卵に影響を与える場合があります。たとえば、栄養不足になるような極端なダイエットをしていると、脳から排卵に必要なホルモンが分泌されにくくなります。一方で、肥満もホルモンバランスの乱れを引き起こし、排卵障害の原因となるため注意が必要です。

(5)性感染症や骨盤腹膜炎の既往がある人
 過去にクラミジアなどの性感染症にかかったり子宮周囲の炎症を起こした経験がある方は、卵管が炎症を起こして閉塞している可能性があります。自覚症状がないまま進行していることも多く、若い頃の感染が後になって不妊の原因になることがあります。

(6)喫煙・過度な飲酒習慣がある人
 たばこに含まれる有害物質は卵巣機能を低下させ、卵子の質にも悪影響を与えることが知られています。さらに、妊娠中の喫煙はさまざまな周産期合併症のリスクを上昇させます。また、過度な飲酒はホルモンバランスを乱す恐れがあります。将来の妊娠を考えるなら、生活習慣を見直すことも重要です。

2)男性側

(1)年齢と精子の質
 男性も年齢を重ねると、精子の質に影響が出ます。一般的に、35歳を過ぎると精子の数や運動率が徐々に低下し、DNAの損傷率も高くなるといわれています。これにより、妊娠しづらくなるだけでなく、流産や胎児の先天的な問題のリスクも高まります。したがって、年齢は男性不妊の大きな要因の一つと考えられています。

(2)生活習慣の乱れ
 喫煙、過度の飲酒、肥満、睡眠不足といった生活習慣の乱れは、精子の質を著しく低下させることが知られています。特に喫煙は、精子のDNAに損傷を与えることが研究で明らかになっており、禁煙が推奨されます。また、過度な飲酒はホルモンバランスを乱し、精子形成を妨げることもあります。肥満は体内のホルモン環境を変化させ、精巣の働きを低下させる要因となります。運動により減量することで精液所見が改善したという報告もあり、運動不足も精液所見を悪化させる要因になるとされています。

(3)ストレス
 精神的なストレスも、男性不妊に大きな影響を与えます。ストレスが続くと、テストステロン(男性ホルモン)の分泌が低下し、精子の数や運動率の低下につながります。さらに、ストレスは性欲や性機能にも影響を及ぼすため、性生活そのものにも支障が出る可能性があります。近年、妊活を試みる比較的若い世代での性機能障害が増加しています。仕事や家庭のプレッシャーが多い人は、ストレスマネジメントも重要です。

(4)精巣温度の上昇
 精子は高温に弱いため、精巣が長時間高温にさらされると、精子形成に悪影響を及ぼします。たとえば、長時間のサウナや熱いお風呂、ノートパソコンを膝の上で使用すること、ピチッとした下着を日常的に着用することなどは、精巣温度の上昇を招きます。デスクワークや車の運転時間が長い人も注意が必要です。

(5)精索静脈瘤やその他の疾患
 男性不妊の原因は不明(特発性)のものが一番多いですが、原因が判明しているものの中で最も多いとされるのが「精索静脈瘤」です。これは、精巣の周りにある静脈が拡張し、血流が滞ることで、精巣の温度が上昇し、精子の質が低下する疾患です。精索静脈瘤は自覚症状が少ないため、不妊検査を受けて初めて発見されることも少なくありません。左側に生じることが多く、精巣の上にもう一つ精巣があるように見える場合は精索静脈瘤の可能性があります。また、クラミジアをはじめとする性感染症やホルモン異常、遺伝的な疾患も不妊の原因となることがあります。

(6)環境的な要因
 近年注目されているのが、化学物質や電磁波など、環境因子による影響です。たとえば、農薬やプラスチックに含まれる環境ホルモン(内分泌かく乱物質)は、精子形成に悪影響を及ぼす可能性があると指摘されています。また、携帯電話をズボンのポケットに長時間入れておく習慣も、精巣に悪影響を与えるとの報告もあります。これらはまだ研究段階ですが、過度な接触は避けるのが無難です。

(7)過去の病歴や外科手術
 幼少期に「停留精巣(精巣が陰嚢に降りてこない状態)」だった人や、思春期に精巣捻転やヘルニアの手術を受けた人は、将来的に精子の数や機能に問題を抱える可能性があります。また、抗がん剤治療や放射線治療を受けた経験のある人も、精巣機能が低下する場合があります。

 男性不妊症になりやすい人には、さまざまな特徴があります。もし妊娠を望んで一定期間経っても成果が出ない場合は、女性だけでなく男性も積極的に検査を受けることが大切です。生活習慣の見直しや適切な治療によって、改善が見込めるケースも多いため、早めの対応が望まれます。

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