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一般社団法人日本生殖医学会

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ホーム > 一般のみなさまへ:生殖医療Q&A(旧 不妊症Q&A) > Q5.どんな人が不妊症になりやすいのですか?

一般のみなさまへ

質問リスク因子
Q5.どんな人が不妊症になりやすいのですか?
1)女性側 2)男性側

回答

1)女性側

 一般には、結婚あるいは同居後タイミングを取り始めて1年たって妊娠が成立しなかったときに、不妊症として病院へ行く、と考えられています。しかし、以下のような症状がある場合、病院に行けば不妊症かもしれない、という診断がついて、はやくに治療が開始されて無駄な時間を過ごす危険性がなくなるかもしれません。このような場合、6ヵ月程度妊娠しなかったら病院を受診しても良いと考えられます。また、年齢が35歳以上の場合も同様です。

(1)月経の異常がある女性
①月経周期の異常:
 月経の間隔が長い(39日以上あく)方、逆に極端に短い(24日以内に来る)方は排卵をしていないことが多くあります。極端な肥満や、逆にやせ過ぎ、あるいはストレスでこのような月経周期の異常が起こることもあります。このような方は不妊症のリスクが高いので基礎体温を1~2ヶ月つけて早めに受診して下さい。

②月経量・期間の異常:
 月経の量が極端に多い、あるいは長い(8日以上)方は子宮筋腫などで子宮の内腔(受精卵が着床するところ)の形が変形していることがあります。逆に月経の量が極端に少ない、あるいは短い(2日以内)方は月経があっても排卵していなかったり、過去に人工妊娠中絶や流産の処置を受けたことがある方は子宮の内腔の一部が癒着していることがあります。このような症状がある方は不妊症のリスクが高いと考えられます。

③月経にともなう症状の異常:
 月経の際の痛みが若いころに比べてどんどん強くなる、月経時に下痢をいつも起こす、あるいはセックスの時に以前になかった痛みが出て来た、などは子宮内膜症の症状の可能性があります。子宮内膜症の方が妊娠しないわけではありませんが1周期あたりの妊娠率は正常の婦人に比べて1/10ぐらいと言われており、不妊症のリスクが高くなる病気です。

(2)性感染症・骨盤腹膜炎
 クラミジアや淋菌といった性行為感染症にかかったことがある方、以前に骨盤腹膜炎を起こしたことのある方は主に卵管が原因の不妊症のリスクを上昇させます。とくに、腹部の手術後で腹膜炎やイレウス(腸閉塞)を起こした既往のある方は要注意です。

(3)以前に子宮筋腫・子宮内膜症を指摘されている場合
 以前、健康診断などで子宮筋腫、子宮内膜症と言われている場合、早めの受診が適当です。とくに、子宮内膜症によるチョコレートのう腫がある場合には、卵子の老化が年齢より進むこともあると言われているので、要注意です。子宮内膜症の患者さんの約半数は不妊症を合併し、不妊症患者の約25~50%に子宮内膜症が診断されるといわれています。

(4)35歳以上の女性
 女性の妊娠率の減少は30歳から徐々に始まり、35歳を過ぎると加速し、40歳を過ぎると急速に減少します。これは、加齢による卵の質の低下によるものです。
 不妊症に繋がる特定の原因がなくても、加齢によって不妊症になる確率は高まるため、35歳以上の方は不妊治療も選択肢として考えながら、早めに専門医に相談すると良いでしょう。

2)男性側

 精巣内で精子が造られますので、もっとも気にしていただくのは睾丸の大きさです。睾丸が小さくなったり、柔らかくなったりした人は精液所見が悪化している可能性があります。また、睾丸の上にもう一つ睾丸があるかのように見える複数の血管のコブ(精索静脈瘤)がある人も要注意です。陰嚢内は体温より低い温度に保たれており、睾丸は低い温度で精子を造りやすいのですが、精索静脈瘤では体温と同じ温度の血液が睾丸近くにたくさんあるため陰嚢内でも睾丸の温度が低くならないからです。精索静脈瘤は左側に多く、立位でお腹に力を入れた状態の方が確認しやすいです。
 睾丸が陰嚢内の上方、あるいは鼡径部に位置している人(停留睾丸)も、睾丸の温度が高くなりがちで精子を造る能力が衰える可能性があります。仮に子供の頃に停留睾丸の手術を受けた人であっても、精液所見が悪化していることがあるので、注意した方がいいでしょう。さらに、子供の頃に鼡径ヘルニア(脱腸)の手術を受けた人も男性不妊症に陥る可能性があります。睾丸で作られた精子は鼡径管の中を通りますので、その場所を手術することで精子がうまく通らなくなる可能性があるからです。
 おたふく風邪にかかった後、睾丸が腫れあがった人は、睾丸炎により精子を造る力が衰えている可能性があります。おたふく風邪にかかわらず、高熱が続いた人、とくに睾丸付近に痛みを感じたことがある人も睾丸の働きが悪くなっている可能性があります。睾丸の横に位置する副睾丸が腫れあがる副睾丸炎や、前立腺炎などにかかったことがある人も、そのために精子が通りにくくなっている可能性が考えらえます。
 これまでに抗癌剤治療や放射線治療を受けたことのある人は、睾丸の状態が悪くなっている可能性があります。抗癌剤を使うと、治療終了後、長期間経過した場合でも精子がうまく造れなくなってしまうことがあります。
 肥満や喫煙、睡眠不足、不規則な食生活なども精液の状態に影響する可能性がありますので、注意が必要です。

 少しでも不安を感じた場合は、専門クリニックや泌尿器科での検査をおすすめします。

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