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一般社団法人日本生殖医学会

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一般のみなさまへ

質問治療
Q14.受精卵の凍結保存とはどんな治療ですか?

回答

 受精卵の凍結保存は、体外受精や顕微授精で受精・発育した受精卵を凍らせて保存しておく方法です。
 受精卵の凍結は、受精卵を特殊な溶液に浸した後、ストローに入れた受精卵を-196℃という超低温の液体窒素中で凍結し、保存します。-196℃という温度ではほとんどの化学変化が起こらないため、何十年も全く状態を変化させないままで保存することが出来ます。したがって、食品を冷蔵庫で保存する場合と異なり、保存時間が長くなるほど融解して生まれる出生児に異常が多くなることはありません。この方法を用いれば、一回の採卵で採取した複数の受精卵で兄弟姉妹を作ることも考えられます。
 この方法は当初は多胎妊娠を防止するために開発されました。一回の採卵で多数の卵子が採取されて多数の受精卵が発育しても、移植する胚の数をたとえば1個に制限すれば多胎妊娠を防ぐことが出来ます。最近では、採卵で得られた受精卵をその周期には一つも移植せず、全て凍結して別の周期に移植する方法もとられることがあります(全胚凍結法)。これは採卵した周期に移植すると女性に危険が及ぶと判断される場合や、凍結して移植した方が採卵した周期に(凍結しないで)移植した場合より着床率が高いと考えられる場合に行われます。前述のように受精卵を凍結しても、その凍結受精卵から生まれてくる赤ちゃんには異常は多くならないと考えられています。
 凍結保存法はこのように数々の利点がある方法ですが、いくつか気をつけなければならない注意点もあります。まず、一旦凍結して融解するという、物理的に大きな変化を受精卵に起こすため、一定の確率(5-10%程度以下)で受精卵が凍結融解後に変性してしまうことがあります。さらに大きな変化を起こすと、受精卵そのものが破裂してなくなってしまうこともあります。また、保存温度が上昇して一旦融解してしまうと、細胞は死滅してしまうため、天災や火事の場合などは受精卵を失うことになります。これらの際の取り扱いは治療を受ける際に治療を受ける病院・クリニックとあらかじめ取り決めておくことになります。
 受精卵の保存期間は通常1年ですが、ほとんどの病院・クリニックでは保存期間内に手続きをすればこれを延長することが出来ます。延長は奥様の生殖年齢の範囲内、つまり通常は閉経するまで、認められています。連絡をしないで保存期間が過ぎた場合、御夫婦から廃棄の申し出がなくても病院・クリニックが廃棄するように最初に同意を取り交わしていることが多いと思われますので、もし将来使用する希望があるときには、忘れずに御夫婦の責任で延長の手続きをしてください。
 受精卵はお二人のものですので、たとえ保存期間中であっても、奥様の子宮に移植する際も、保存を延長する場合や保存期間中に破棄する場合も、お二人の同意が必要です。御夫婦のどちらか一方が同意しない場合、移植に使用することは出来ません。また現在は、御夫婦のどちらか一方がなくなった場合、および離婚した場合には、その受精卵を用いて妊娠をはかることは認められていません。

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