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一般社団法人日本生殖医学会

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ホーム > 一般のみなさまへ:生殖医療Q&A(旧 不妊症Q&A) > Q23.女性の加齢は流産にどんな影響を与えるのですか?

一般のみなさまへ

質問年齢が不妊・不育症に与える影響
Q23.女性の加齢は流産にどんな影響を与えるのですか?

回答

 一回の妊娠における流産の頻度は平均的には15%ですが、加齢とともに増加します(図1)。特に40歳以上では妊娠の約半数が流産します。散発流産の70-80%は胎児(胎芽)染色体異常によって起こります。これは夫婦の染色体が正常でも起こります。卵子・精子は染色体減数分裂を経て成熟します。精子が生涯作られ続けるのに対し、卵子は胎児期に卵母細胞が作られた後、新たに形成されません。減数分裂の途中で卵子形成が止まっており、排卵の直前に減数分裂が再開して成熟します。そのため、排卵までの時間が長い(高齢になってから排卵する)と、染色体分配エラーが起こるため、それらの卵子が受精すると染色体が3本あるトリソミーや1本しかないモノソミーといった染色体数的異常が発生することがあります。モノソミーの受精卵の多くは妊娠に至りません。トリソミーの受精卵の一部は妊娠しますが、途中で発生が止まります。その結果が流産となります。女性の加齢とともに不妊症、流産ともに増加します。
 50歳前後で閉経するまでに卵子数は減少し、しかも残っている卵子も加齢とともに妊娠能力がなくなるのであって、月経がある限り妊娠できるわけではありません。
 なお、欧米では高齢女性に対して染色体異数性を調べる着床前染色体異数性検査preimplantation genetic testing for aneuploidy (PGT-A)が実施されています。日本では日本産科婦人科学会が倫理的な理由から禁止してきましたが、2017年1月から2018年6月の間に、①反復流産・習慣流産の患者さんと②胚移植を3回以上行っても妊娠に至らない反復体外受精不成功の患者さんを対象として、ふたつの臨床研究を実施しました。いずれも35-42歳で、体外受精を受けている患者さんたちでした。①では、過去の流産の胎児が染色体異数性であることがわかっている方に限定しました。その結果、どちらの患者さんでも、患者あたりの出産率は変わらず、流産率も減少しませんでした。どちらの患者さんも胚移植あたりの出産率はPGT-Aを行うことでよくなりました。
 この意味は、たくさんの良好な胚が得られる患者さんにとっては胚移植回数を減らすことができるという意味であり、出産できない人が産めるようになる、という意味ではありません。欧米でもたくさんの良好な胚が得られる患者さんでは出産率がよくなるという報告がある一方で、出産率、流産率もよくならないという報告もあり、効果は定まっていません。

 PGT-Aや薬剤投与をしなくても、40歳代不育症女性の半数以上が出産に至っており、流産にくじけないことが大切です。
 経済的理由によって妊娠を先送りにされる方もみえますが、先送りの結果不妊症になった場合、体外受精は高額ですから、早期に出産した方が得策です。“適齢期”という言葉を女性は嫌いますが、安全な妊娠を考えれば20代が妊娠適齢期です。いつか子供を持ちたいと考えておられる女性は妊娠適齢期を考慮した人生設計を考えることをお勧めします。

図1 女性の加齢による流産の頻度
図1 女性の加齢による流産の頻度
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