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妊娠が成立するまでの流れ
妊娠は、卵子と精子が出会い、受精卵が子宮内膜に着床することで成立します。
その流れは以下のようになります。
それでは、それぞれのステップについて詳しく見ていきましょう。
排卵
卵巣の中には、生まれたときから、卵子が薄い膜に包まれた原始卵胞と呼ばれる構造がたくさん存在しています。これらは長いあいだ休眠状態にありますが、思春期以降、少しずつ目を覚まし、数か月かけて成熟に向けて発育していきます。月経周期の中で、月経が始まる頃には胞状卵胞と呼ばれる大きさ5mmほどの卵胞が複数見られます。これらは脳の下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)の働きで成長し、その中で最も発育が進んだ1つが成熟卵胞となります。この成熟卵胞は、黄体形成ホルモン(LH)の急激な増加(いわゆるLHサージ)を受けて卵子を放出します。これが「排卵」です。排卵の時期は、月経周期が28日の人ではおおよそ14日目になります(図1)。排卵された卵子の寿命はおよそ24時間といわれています。卵子は、卵管の先端にある卵管采に取り込まれ、卵管膨大部と呼ばれる場所に移動して精子との出会いを待ちます(図2)。
受精
一方、精子は精巣で日々新しく作られ、性行為によって腟内に射精されます。その寿命は女性の体内では通常2~3日、長い場合で5日程度といわれています。排卵が近づくと、子宮の入り口にあたる子宮頸部から透明で粘り気のある頸管粘液が分泌され、精子が子宮の中へと進みやすくなります。精子は、頸管粘液の中を泳ぐようにして子宮内に入り、さらに卵管へと進み、卵管膨大部へとたどり着きます。射精時には数千万個もの精子が放出されますが、卵子と出会うのはごくわずかで、最終的に1つだけが卵子に入り込み、「受精」が成立します(図2)。このとき、両親からの遺伝情報がひとつに合わさり、新しい命の設計図が完成します。
着床
受精した卵子(受精卵)は、細胞分裂を繰り返しながら、ゆっくりと卵管を移動して子宮へと向かいます。2個、4個、8個…と分裂を続け、やがて100個ほどの細胞からなる胚盤胞という構造になります。その間に、子宮内では受精卵が着床しやすいように子宮内膜がふかふかのベッドのように整えられます。排卵後およそ6日目に胚盤胞が子宮腔に到達し、7日目前後に内膜にもぐり込んで「着床」します(図3)。ここからが妊娠の始まりです。
おわりに
妊娠の成立には、卵子の成長、精子の旅、受精卵の発育、そして着床までの繊細で複雑なプロセスがあります。こうした生命のしくみを知ることは、自分自身の体と向き合う大切な第一歩です。この知識が、将来に向けたさまざまな選択を考えるうえでのヒントになれば幸いです。
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