2013年11月15日
2013年11月
一般社団法人日本生殖医学会倫理委員会は、近年の未受精卵子および卵巣組織凍結技術の急速な進歩とその臨床応用の現況を考慮し、この技術の安全性を十分に確保し、利用希望者による正確な理解を援助・促進するために必要な、利用者と提供施設双方において留意すべき事項を検討してきた。ここに、約1年半にわたる7回の協議に基づき、検討結果を「未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関するガイドライン」として提示する。
本ガイドラインは、未受精卵子および卵巣組織凍結技術の適応について、悪性腫瘍の治療等、医学的介入による性腺機能の低下をきたす可能性を懸念する場合を「医学的適応」、加齢などの要因により性腺機能の低下をきたす可能性を懸念する場合を「社会的適応」として区別し、それぞれについて留意すべき事項を提示した。その理由は、前者が未受精卵子および卵巣組織凍結技術の本来の適応であり、原疾患の治療へ影響を及ぼす可能性など、安全性の確保等についてより根本的かつ基本的な問題にかかわっていることから、後者より丁寧で十分な説明と配慮が必要であると本委員会が判断したからである。
なお、妊娠・分娩をするかしないか、その時期を何時にするかはあくまでも当事者の選択に委ねられる事項であり、本ガイドラインは未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存の実施を推奨するものではない。また、母児の合併症やさまざまなリスクを考慮すると、妊娠・分娩には適切な年齢が存在するのであり、本ガイドラインは、未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存とそれによる妊娠・分娩時期の先送りを推奨するものでもない。
一般社団法人日本生殖医学会倫理委員会
石原 理(委員長:産科婦人科学)
市川 智彦(泌尿器科学)
苛原 稔(産科婦人科学)
押尾 茂(薬学)
梶原 健(産科婦人科学)
久具 宏司(産科婦人科学)
柴原 浩章(産科婦人科学)
吉村 泰典(産科婦人科学)
家永 登(外部委員:家族法学)
上杉 富之(外部委員:文化人類学)
長沖 暁子(外部委員:社会学)
廣野 喜幸(外部委員:生命倫理学)
1)Practice Committees of American Society for Reproductive Medicine; Society for Assisted Reproductive Technology. Mature oocyte cryopreservation: a guideline. Fertil Steril 2013 99(1):37-43.
2)ESHRE Task Force on Ethics and Law, Dondorp W, de Wert G, Pennings G, Shenfield F, Devroey P, Tarlatzis B, Barri P, Diedrich K. Oocyte cryopreservation for age-related fertility loss. Hum Reprod 2012 27:1231-7.
医学的適応による未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存のガイドライン[PDF 112KB]
社会的適応による未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存のガイドライン[PDF 110KB]
未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存を行う施設の要件について[PDF 144KB]
参考資料 パブリックコメント(募集期間 平成25年9月13日~30日)集計結果[PDF 183KB]