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一般社団法人日本生殖医学会

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ガイドライン

2001年6月15日

倫理委員会報告
「クローン技術の生殖補助医療への応用に関する検討」に関する報告

 倫理委員会では「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」が制定される過程で、平成12年6月27日第41回倫理委員会において「クローンに関するワーキンググループ」を設置することを決定して、下記の項目について検討してきた。その経過と結果を報告する。

平成13年6月15日
倫理委員長 永田 行博

 「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」が平成12年11月に成立し、12月に公布された。平成13年6月には正式に発効し、今後その施行細則が制定される予定である。
 日本不妊学会倫理委員会は「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」の成立過程において管轄官庁である科学技術庁(現文部科学省)と意見の交換を行ってきた。
 一方当委員会内に「クローンに関するワーキンググループ」を設置して、クローン技術の生殖補助医療への応用の可能性とその内容を検討してきた。
 その結果、次のような事項について、将来的に生殖補助医療に応用できる可能性があるとの大方の意見の集約を見たので報告する。

1)特定胚のうち、ヒト胚分割胚の作製とその臨床応用の可能性について

〔理由〕
排卵誘発剤に対する低反応卵巣の治療に応用できる可能性がある。また将来、卵巣刺激法による卵巣過剰刺激症候群などの副作用の予防となりうる。

2)特定胚のうち、ヒト胚核移植胚の作製とその臨床応用の可能性について

〔理由〕
高齢婦人の不妊治療ならびにミトコンドリア病の治療に応用できる可能性がある。

3)ヒト胚核移植胚の作製にあたり、未受精卵の提供について

〔理由〕
卵および胚の質の低下が着床障害の大きな原因となっているので、卵細胞質の老化の改善には除核した卵細胞質の提供が必要である。

4)ヒト胚性幹細胞(ES細胞)樹立のためのヒト体細胞クローン技術の生殖医療への応用について

〔理由〕
体細胞クローン技術を利用した再生医学や移植医療分野における応用のみならず、分化誘導によるヒト配偶子の形成に利用できる可能性がある。

〔注〕
特定胚とは、ヒト胚分割胚、ヒト胚核移植胚、人クローン胚、ヒト集合胚、ヒト動物交雑胚、ヒト性融合胚、ヒト性集合胚、動物性融合胚、動物性集合胚をいう。

 以上の4項目が将来的に生殖補助医療に応用の可能性があるクローン技術として集約された。最近の報告によると、米国ではすでにミトコンドリア病の治療に第2項および第3項の技術を利用して、卵細胞質の提供による核移植技術が臨床応用されていることが明らかにされた。
 本委員会は、上記の技術がわが国で直ちに臨床応用されるものではないとの一致した認識のもとに、「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」の発効に伴い、施行細則が制定される過程で、人類の健康と福祉のために、未受精卵および余剰胚を用いたクローン技術の医学研究が続行できるように配慮されることを希望するものである。

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