会長挨拶

第55回日本生殖医学会総会・学術講演会の開催にあたって

会長 苛原  稔(徳島大学大学院産科婦人科学分野)

 平成22年11月11日(木曜日)・12日(金曜日)の2日間にわたり、第55回日本生殖医学会総会・学術講演会を徳島市で開催させて頂くことになり、大変光栄に存じます。
 日本における生殖医療は、1980年代後半から始まった生殖補助医療技術の目覚ましい発展とともに、この四半世紀は進歩の一途を辿って参りました。これには本生殖医学会員を中心とした多くの生殖医療に係る関係者の多大な努力の積み重ねがあったものと思います。しかし、今日、生殖医療は激動の発展期を過ぎて成熟期に入って来たと実感しています。いたずらに妊娠率を追及するのではなく、より効率的で安全な不妊治療が一般化してきたことはその証拠のひとつであると思います。
 生殖医療の発展期においては、様々な問題が発生しましたが、多くの問題は発展的エネルギーを背景とした努力と英知で克服されてきました。しかし、一方で、発展のために解決を先送りした課題があったり、医療技術の開発・発展が新たな課題を発生させるなど、積み残した課題もまた山積しています。生殖医療が成熟期を迎えた今、さらに発展を続けるには、これらの問題に腰を据えて立ち向かい解決する時期にきているのではないでしょうか。そして、そのために私たちに必要とされているのは、今までを冷静に評価し、新しい時代の構想を立ち上げる活力と勇気ではないでしょうか。
 そこで、今回の学術講演会のメインテーマを「これからの日本の生殖医療を考える」と設定させていただきました。特に、基礎と臨床の研究、新しい医療技術、診療上の問題点、医療従事者とそれをサポートする職種の連携、アジア各国との協力体制、そして生殖医学会そのものの在り方など、各々、メインテーマに沿った教育講演、シンポジウム、などのプログラムを用意しています。本講演会が、これまでの不妊治療を一度総括し、今後の生殖医療の進むべき方向性を考える機会になればとの思いを込めました。
 会場は徳島市の阿波銀ホール(郷土文化会館)とホテルクレメント徳島の両会場を使用します。地方のため交通・宿泊に多少のご迷惑をおかけしますが、11月の徳島は新鮮な山海の珍味が食せる時期であり、また当地自慢の阿波踊りも鑑賞していただくことにしていますので、学会外でも楽しんでいただけるものと信じています。
 多数の会員の皆様のご出席を、教室員一同、心よりお待ち申し上げています。